旧帝大就活研究会
編纂手記

業種別採用方式動向 ── 商社・金融・メーカーの三年観測

就職活動の初期段階において、WEBテストの方式を事前に把握しているかどうかは対策効率に直結する。同じSPIでも、テストセンター形式と自宅受検形式では問題の難易度・時間配分・出題傾向が異なり、業種によって採用される方式も大きく異なる。本研究会では、2023年4月から2026年3月にかけて収集した卒業生・在学生の受験報告(商社74件・金融128件・メーカー211件、合計413件)を集計・分析し、業種別の採用方式動向を以下に記す。企業名は個人特定防止の観点から匿名とするが、方式分布の数値は実データに基づいている。27卒・28卒の諸氏が対策の優先順位を組み立てる際の参考資料として活用されたい。

目次

  1. 商社:総合商社・専門商社の方式分布
  2. 金融:メガバンク・証券・保険の三分類
  3. メーカー:大手製造業の方式と多様性
  4. 三業種を横断する傾向
  5. 業種別の優先対策
  6. よくある質問

商社:総合商社・専門商社の方式分布

総合商社(いわゆる五大商社を中心とする大手総合商社群)の採用方式については、三年の観測期間を通じてテストセンター形式のSPIが最多であり、74件中54件(73%)を占めた。残る20件のうち16件は玉手箱(自宅受検型)、4件は独自設問を含む複合方式であった。

総合商社の方式傾向

テストセンター形式を採用する総合商社においては、言語・非言語の双方が出題される標準的なSPI-Nが基本となる。英語問題(E-CAB)を付加するケースも複数報告されており、総合商社を第一志望とする場合は英語版SPIへの備えも検討されたい。また、一次選考と二次選考で方式を変更する事例(一次=玉手箱・二次=テストセンターなど)が三年間で複数確認された。前回の選考フェーズで合格した方式と同一と思い込んで準備を省略するのは危険である。

専門商社の方式傾向

専門商社は総合商社に比べて方式の多様性が高い。本研究会に寄せられた受験記録の中には、SCOA・TG-WEB・内田クレペリン検査など、総合商社では稀な方式も含まれていた。専門商社を複数受ける予定がある場合は、SPI一本に絞った対策では対応しきれないリスクを念頭に置く必要がある。志望企業の方式は早期に個別確認し、対策範囲を絞り込む判断材料にされたい。

金融:メガバンク・証券・保険の三分類

金融は本研究会が最も多くの受験報告を収集している業種であり、128件という件数は他業種を大きく上回る。以下、三分類に整理する。

メガバンク

メガバンク三行については、テストセンター(SPI)が観測期間を通じて主力方式である。ただし2024年以降の報告では、一部行において玉手箱形式へのシフトが観察された。同一行でも総合職・地域職・特定専門職で方式が異なる事例があるため、エントリーする職種を確認したうえで方式を特定することが重要である。「昨年の先輩はSPIだった」という情報だけを根拠に準備を進めるのは過信につながる。

証券会社

大手証券・中堅証券を問わず、玉手箱の採用率が高い傾向にある。128件中、証券関連40件のうち玉手箱は27件(67.5%)に達した。玉手箱の計数問題(図表・グラフ読み取り)には独自の解法と速読パターンが存在するため、SPIとは別途に対策時間を確保する必要がある。一部の外資系証券ではSHL形式(英語版)が採用されており、これらを志望する場合は英語の語彙・計数問題への対応も欠かせない。

保険会社

生命保険・損害保険ともに、方式は比較的安定している。SPI(テストセンター)と玉手箱がほぼ同数であるが、内田クレペリン検査を採用する会社も一定数存在する点が他業種との差異として挙げられる。本研究会の受験記録では、保険会社を受けた学生の約12%が内田クレペリンに遭遇したと報告している。内田クレペリンは作業量の継続性・正確性を測る形式であり、論理的推論を問う他方式とは全く異なる対策が必要なため、保険会社を複数受ける予定の場合は別途時間を確保されたい。

メーカー:大手製造業の方式と多様性

メーカーは業種内の多様性が最も高く、211件の受験記録においても単一方式への集中は見られなかった。

文系総合職と理系技術職の差異

メーカーにおいては文系総合職と理系技術職で採用方式が分かれる場合がある。文系総合職にはSPIが多用される一方、理系技術職では専門科目試験を併用したり、SPI-G(理系科目追加版)を採用するケースが確認された。理系学生が文系総合職と理系技術職の双方にエントリーする場合、対策の内容が異なることを認識しておく必要がある。

大手電機・自動車・素材メーカーの傾向

電機・自動車・素材の大手三セクターを比較すると、電機は玉手箱の採用率が比較的高く(電機関連47件のうち22件、約47%)、自動車は長年テストセンターSPIが中心で推移しており、素材は企業規模によって方式が大きく異なるという傾向が読み取れた。ただし、同セクター内でも企業によって方式は異なるため、これはあくまでも本研究会の収集範囲内での傾向として参照されたい。

三業種を横断する傾向

三業種の合計413件を通じ、以下の共通傾向が観察された。

  • テストセンターSPIと玉手箱(WEB自宅受検)で全体の78%を占める:この二方式を先に確立することが、最も広い受験機会への対応につながる。
  • 方式は年度によって変わりうる:同一企業であっても前年度の方式を踏襲するとは限らない。先輩情報は参考にしつつも、当年度のエントリー直前に受験記録の最新情報を確認する習慣が望ましい。
  • 一企業内でも選考フェーズによって方式が変わる事例がある:一次はSPI・二次はGABといった組み合わせが複数社で観測された。一度通過した方式への安心感から再受検準備を怠るのは避けるべきである。
  • 受験記録の蓄積年度には注意が必要:本稿で引用した数値は2023〜2026年の三年間のものであり、それ以前のデータとは傾向が異なる場合がある。

業種別の優先対策

上記の分析をふまえ、業種別の対策優先順位を整理する。

商社志望

  1. テストセンターSPI(言語・非言語)を最優先で仕上げる
  2. 玉手箱(計数・言語)を次点で対策する
  3. 総合商社かつ英語重視の会社を含む場合はSPI英語を加える
  4. 専門商社を複数受ける場合はTG-WEB・SCOAの基礎確認も行う

金融志望

  1. テストセンターSPIと玉手箱の双方を対策し、どちらが来ても対応できる水準にする
  2. 証券・外資系金融を含む場合は玉手箱計数の独自解法習得を優先する
  3. 保険会社を複数受ける場合は内田クレペリンへの基本的な慣れを確保する

メーカー志望

  1. 志望企業のセクター・職種を先に確認し、方式を特定してから対策に入る
  2. 理系技術職はSPI-Gの対策要否を職種ごとに確認する
  3. 受験予定社数が多い場合はSPI+玉手箱の二本立てを基本方針とする

本研究会では、各業種の方式分布と合わせて参照できるWEBテスト対策資料「旧帝大就活研究会 WEBテスト解答集」(4,500円・税込)を頒布している。主要17形式に対応した卒業生有志による継続改訂版であり、業種別の方式傾向と照らし合わせながら対策範囲を絞り込む際の一助として活用されたい。

よくある質問

Q. テストセンター形式と自宅受検のSPIは同じ対策で通用するか

SPIはテストセンター・WEBテスティング(自宅受検)の双方が存在し、出題範囲は概ね共通だが、問題の難易度・時間配分・インターフェースが異なる。テストセンターは指定会場でのパソコン受検で、受験者のレベルに応じて問題難易度が動的に変化するアダプティブ方式が採られる。自宅受検は時間当たりの問題数が多くスピードが要求される。どちらか一方の練習だけでは対応に差が出る可能性があるため、志望企業の方式を確認のうえ、両形式の模擬問題で適宜慣れておくことが望ましい。

Q. テストセンターのスコアは複数社の選考に使いまわせるのか

テストセンター(SPI)には一定期間スコアを保持し、別の企業の選考に転用できる仕組みが存在する。スコアを保持したまま複数社に送付できるため、高得点を記録できた場合は有利に働く。一方、スコアが低い場合は再受検して最新のスコアに上書きすることも可能である。ただし、企業によってはスコア転用を受け付けず独自のテストセンター予約を求める場合もあるため、各社の案内を個別に確認されたい。

Q. WEBテストの結果は選考のどの段階でどの程度重視されるのか

企業・職種・年度によって異なり、本研究会の受験記録から選考基準の数値を特定することはできなかった。一般的に、エントリー数の多い大手企業では一次選考の足切りツールとして機能する傾向があり、選考が進むにつれて面接・グループワーク等の比重が高まるとされる。本研究会の蓄積からは、言語・非言語ともに正答率70%超を継続できた受験者の通過報告が多い傾向が見られたが、これをもって合格ラインとは断定できない。

Q. 受験予定企業が30社を超える場合、いつから何の対策を始めるべきか

エントリー開始(多くの場合3月)の2〜3か月前までにSPIテストセンターと玉手箱の基礎を固め、残り期間で志望企業固有の方式に絞り込むスケジューリングが、本研究会の受験記録で高得点を示した学生に共通するパターンである。30社を超える受験では全方式を均等に対策する時間は現実的に確保しにくいため、まず二方式(SPI・玉手箱)で全体の7割超をカバーし、次点でTG-WEBを加えるという優先順位が実用的である。

Q. 同一企業に翌年度再エントリーする場合、前回のWEBテスト結果は参照されるか

再エントリー時に前回の選考結果・WEBテストスコアが参照されるかどうかは企業の運用方針によって異なり、本研究会では確認できていない事例が多い。一般的には年度ごとに選考は独立して行われ、再受検を求められるケースが多いと報告されているが、確証はない。前回の結果に依存せず、当年度のスコアで勝負できる準備を整えておくことが安全な対応といえる。

あわせて読みたい

頒布所へ進む(4,500円)