旧帝大就活研究会
編纂手記

AI監視型WEBテストの実態と見分け方

本研究会は先に解答集は検知されるのか ── 監視方式の整理を公開し、「各社は不正対策の技術仕様を公開していない」という一点で整理を止めた。その後、この整理に反例があることが確認できた。ヒューマネージ社の『TG-WEB eye』は、AIによる監視を商品名に掲げ、料金・提供開始時期・受験者数を公表している。本稿は前稿を一次資料で更新する続編である。

目次

  1. AI監視型とは何を指すか
  2. 『TG-WEB eye』の位置づけ ── 標準機能ではなく追加オプション
  3. 公表されている数値と、公表されていない数値
  4. AIが何を検知するかは公表されているか
  5. 受検案内から監視型を見分ける観点
  6. 本研究会の見解 ── 監視の有無は形式名では決まらない
  7. まとめ
  8. よくある質問

AI監視型とは何を指すか

AI監視型とは、受検中の行動をAIが監視し、不審と判定された行動を受検結果とともに企業へ報告する方式を指す。『TG-WEB eye』の特設ページは、しくみを次のように記す。

AI試験官が替え玉受験やカンニングをしていないかを監視し、不審な行動を検知した場合は受験結果とともに報告します。

同ページは続けて「企業はその報告内容を確認してから合否の判断が可能です」と記す。AIは報告までを担い、判断は企業に残る設計だとされている。公式サービスページは、これを「従来のマークシート方式、WEBテスト方式、テストセンター方式、オンライン監視型Web会場方式に続く第5の受験方式」と位置づけている。

『TG-WEB eye』の位置づけ ── 標準機能ではなく追加オプション

結論を先に置く。AI監視は適性検査に最初から備わった標準機能ではなく、企業が追加費用を払って選ぶオプションである。

特設ページは「適性検査「TG-WEB」の受験料+500円で提供しています」と記し、料金表の欄でも「受験料+500円で追加が可能です」と重ねている。公式サービスページの料金表も同じ趣旨を示し、年間利用料が「なし ※別途初期設定費3万円」、AI監視料金を含む受験料が「3,500円/件」と掲げられている。これはパーソナリティ(B5)・ストレス対処力(G9)・知的能力(言語・数理)を組み合わせた例に対する表示である。

受検者の側から見れば、この一点が効いてくる。同じ「TG-WEB」の名で案内が届いても、企業が一件あたり500円の上乗せを選んだか否かで監視の有無が変わりうるということである。

公表されている数値と、公表されていない数値

監視型をめぐる話題では、公表値と推測が混ざって流通しやすい。確認できた公表値と確認できなかった事柄を仕分けておく。

項目 公表の有無 公表されている内容 出典と注記
提供開始 あり 2020年12月に提供開始 HRプロ掲載リリース(2025年4月10日)
導入社数 あり 導入社数100社を突破 同社リリース(2022年5月31日)
受験者数 あり 受験者数40万人を突破 HRプロ掲載リリース(2025年4月10日)
追加料金 あり 適性検査「TG-WEB」の受験料+500円 特設・公式の両ページに記載
初期設定費 あり 年間利用料なし・別途初期設定費3万円 公式サービスページの料金表
受験料 あり 3,500円/件(AI監視料金含む) 同上。組み合わせ例に対する表示
採用の割合 条件付き 能力検査を実施する企業の2社に1社 HRプロ掲載リリース(2025年4月10日)。母数に注記あり(後述)
継続率 あり 100%の継続率 HRプロ掲載リリース(2025年4月10日)。算定方法の記載なし
検知項目の詳細 確認できず ── 後述
導入企業名の網羅リスト 確認できず ── 個別事例の公開はあるが一覧はない

とりわけ注意を要するのが「2社に1社」である。この数値には「ヒューマネージが提供する知的能力検査導入企業様のうち、AI監視型Webテスト「TG-WEB eye」を導入している企業様の割合(2025年3月末日時点)」との注記が付されている。同社の検査を導入した企業の内訳であって、就職活動で受ける全WEBテストの半分が監視型である、という意味ではない。数値は母数まで一緒に引かなければ意味が変わる。

AIが何を検知するかは公表されているか

確認できない、というのが本研究会の回答である。

公式サービスページは「AIが替え玉受験やカンニングがないかを監視します」と記すにとどまり、テストの実施方法を説明するページも「替え玉受検やカンニングがないかAIが監視します」という水準である。抑止の対象となる行為の名前は示されているが、どの挙動をどの基準で不審と判定するのかという検知項目の一覧は、閲覧した範囲では確認できなかった。

前稿の整理は、したがって半ば更新され半ば維持される。更新されるのは「監視の有無と、その価格と規模は公表されている」点であり、維持されるのは「検知の中身は公表されていない」点である。

受検案内から監視型を見分ける観点

手がかりは形式名ではなく案内文の中にある。確認できる範囲で言える観点は次の三点である。

一、実施方法の名称。ヒューマネージ社の実施方法ページは「オンラインAI監視型WEBテスト方式『TG-WEB eye』、テストセンター方式、WEB方式、マークシート方式の中から採用場面や対象者にあわせて、最適な方法をお選びください」と記す。方式は企業が選ぶものであり、受検案内に方式名が明記されていれば最も確実な手がかりとなる。

二、カメラの使用を求められるか。AIが受検中の行動を監視する以上、カメラ映像の取得が前提となる。HRプロ掲載リリース(2025年4月10日)に載る導入企業の声にも「Webカメラの使用に抵抗を感じていないという声も多い」とある。受検前の手続でカメラの使用許可を求められるかは有力な判断材料である。

三、予約の要否。実施方法ページは『TG-WEB eye』の利点に「事前予約は不要」「受検者の都合の良いときにいつでも自宅から受検が可能です」を挙げる。日時指定の予約手続を求められる案内であれば、別方式の可能性を考えるべきである。

なお、受検サイトのドメインが志望企業ではなく検査提供各社のものである点は多くの形式に共通しており、ドメイン名だけで監視の有無を判別する材料を本研究会は持たない。

本研究会の見解 ── 監視の有無は形式名では決まらない

本研究会の見解は一つである。監視の有無は形式名では決まらず、企業が追加費用を払ってその機能を選んだかどうかで決まる。形式名を起点にした判断は、少なくとも公表資料と整合しない。

加えて、公表値そのものの扱いにも慎重さが要る。導入社数100社突破のリリースは「サービス提供開始からわずか11ケ月間で、導入社数100社を突破しました」と記すが、提供開始は2020年12月と別のリリースにあり、当該リリースの日付は2022年5月31日である。到達した時期と、それを公表した時期は別物であり、両者の差を説明する記載は確認できていない。本研究会はいずれの公表値もそのまま並記するにとどめる。公表されているという理由だけで、数値を合算したり期間を逆算したりできるわけではない。

まとめ

本稿で確認できたことを四点にまとめる。

  • 公表されているのは、監視していること・その価格・普及の規模である
  • 公表されていないのは、検知の方法と基準である
  • 監視の有無は形式名ではなく、企業がオプションを選んだか否かで決まる
  • 受検者が見るべきは、案内文の実施方法名・カメラ使用の要求・予約の要否である

なお、SPIをはじめとする他形式の受検方式ごとの扱いには踏み込まず、形式ごとの全体像は別手記主要十七形式の体系図に譲る。

前稿から変えていない姿勢も改めて記す。監視の有無は案内文から読み取れないこともあり、読み取れたところで検知の中身は公表されていない。ならば、事前に解法を身につけて臨むという準備の順序を変える理由はない。出題の型を通しで確認したい読者は頒布物の案内を参照されたい。

よくある質問

Q. 受検案内に「TG-WEB」とだけ書かれていた場合、AI監視型かどうかは判別できるか

形式名だけでは判別できない。AI監視は受験料に500円を上乗せして追加するオプションであり、企業がそれを選んだか否かで監視の有無が変わるためである。案内文の実施方法名、カメラ使用の要求、事前予約の要否を確認されたい。

Q. AIは具体的に何を検知しているのか

公表されていない。提供元の各ページは「替え玉受験」「カンニング」という抑止対象の行為名までを記しており、どの挙動をどの基準で不審と判定するかの一覧は、閲覧した範囲では確認できなかった。

Q. 不審と判定されたら、その時点で不合格になるのか

提供元の記述は「不審な行動を検知した場合は受験結果とともに報告します」「企業はその報告内容を確認してから合否の判断が可能です」であり、判断は企業側に残る設計だとされている。企業が実際にどう扱うかは各社の運用である。

Q. AI監視型はどの程度普及しているのか

提供元は2020年12月の提供開始後、2022年5月31日に導入社数100社突破、2025年4月10日に受験者数40万人突破を公表している。「能力検査を実施する企業の2社に1社が採用」との記載もあるが、これは同社の知的能力検査を導入した企業を母数とする割合(2025年3月末日時点)である。

出典

本稿で引用した一次資料は次のとおりである。いずれも2026年7月26日に閲覧して内容を確認した。

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